11月12日(月)から16日(金)にかけて、菅原所長補佐がシドニー市の南約80kmに位置するウーロンゴン市で一週間のインターンシップを行いました。
この期間中、市役所各部局及び観光誘客を担うディスティネーションウーロンゴンの担当者から、ウーロンゴン市の各種行政サービスと政策等についてお話を伺い、特に多文化主義政策と観光戦略について学び、意見交換を行いました。また、職員研修や広報戦略の説明を受け、イベントの準備にも携わり、市長へのブリーフィングにも同席させていただき、オーストラリアにおける地方自治体の役割や機能を多方面から学ぶことができました。
ウーロンゴン市はシドニー市の南約80kmに位置し、人口は約21万人、都市圏人口は約30万人とNSW州第3位の規模を有し、オーストラリア有数の重工業都市です。1930年代から鉄鋼業とコークスや小麦の積出港として栄え、現在も鉄鋼業は主要産業ですが、その他の産業の育成にも力を入れており、特に教育とその関連産業や観光に力を入れています。
同市の観光戦略について、ディスティネーションウーロンゴンにて詳しく学びました。同市には素晴らしいビーチが17もあり、観光客をさらに増加させるため様々な取り組みが行われています。同市はシドニーと世界一白い砂浜として有名なJarvis Bay との中間に位置しており、シドニーから南下する海岸線は絶景が続くので、Grand Pacific Driveと名付けて売り出し、ウーロンゴン市のビーチにも立ち寄ってもらえるように宣伝しています。
また、クルーズ船の誘致にも力を入れています。シドニー市には多数のクルーズ船が寄港しますが、シドニー港はクルーズ船の受け入れ設備が小さく、これ以上の増加は望めないとも言われています。コークス等の積出港となっている水深の深い同市のPort Kemblaは巨大なクルーズ船が停泊できるため、Port Kemblaを窓口に、シドニー市や世界遺産のBlue Mountain、Jervis Bayなどへバスで訪問するツアーを充実させています。クルーズ船の寄港は客単価がとても高く、経済効果が抜群なので力を入れています。世界に目を向けた戦略として、特に東南アジア、中国、英国、NZからの誘客に力を入れています。
同市では主要産業の鉄鋼業に従事するため、南欧と東欧の人々が第二次世界大戦前から移民として押し寄せたため、多文化共生が早い段階で確立され、イタリア人をはじめギリシャ人、マケドニア人などの強固なコミュニティが形成されています。最近は中国と中近東からの移民が多く、人口はこの先10年間で6万人も増加すると見込まれています。
オーストラリアでも多文化共生の長い歴史を有する同市は、多様性こそが街を繁栄させる原動力であると認識し、すべての住民に公正で公平なサービスを提供すべく、多様なコミュニティ組織と連携して、サービスの向上を図っています。また、さまざまな祭りやイベント、プログラムを通じて、多様性に富むコミュニティづくりを推進しています。課題や問題が発生した際には、市がコミュニティの指導者と情報共有を密にして協力し、新たな課題や多様なコミュニティのニーズを的確に把握し、適切な対応を素早く行えるように取り組んでいます。
移民が増加している地域では住民同士のつながりが希薄であるが故の課題が生じがちですが、同市はそうした課題を住民たちに自主的に解決してもらうため、住民が集い顔を合わせる機会を増やせるように、Community Centreの設置や、Community Garden(利用されていない市有地を共用の畑として提供し、住民が野菜等を栽培できる取り組み)の推奨などを行っています。
市内には、5つのアボリジニーのコミュニティが存在しており、同市独自の取り組みとして、Aboriginal Officer(専門官)を設置し、先住民族との融和等を図っています。
今回、同市をインターン先として選んだ経緯は、同市と神奈川県川崎市の姉妹都市交流のご縁がきっかけです。2018年にウーロンゴン市と川崎市における姉妹都市提携が30周年を迎え、7月3日にウーロンゴン市において記念夕食会が開催され、川崎市から福田紀彦市長、松原茂文市議会議長ら関係者が出席し、クレアシドニー事務所から菅原所長補佐を含め3名が参加しました。その際に、菅原所長補佐がGordon Bradbery市長とDirectorのGreg Doyle氏にインターンの受け入れを打診したところ、快く受け入れてもらった次第です。研修内容等の調整は、広報担当課長のSusan Wardle氏が担当され、充実した内容を組み立ててもらいました。研修中に関わった職員は皆親日家で、皆様の心温まるご対応に感激しました。関係者の皆様に心から感謝申し上げますと共に、今後ともウーロンゴン市とのつながりを大切にして参ります。(菅原所長補佐)