9月7日(金)から15日(土)にかけて、タスマニア州ミエンダー・バレー市(Meander Valley Council)を訪問し、インターン研修を実施しました。
同市はタスマニア州北部に所在し、州内第二の都市ロンセストンから自動車で30分ほどの場所に市役所があります。人口は約2万人で、面積は3,821平方キロメートル、65歳以上の人口の割合は20.9パーセントです(豪州全体では15.8パーセント。2016年度国勢調査)。主要な産業は製造業、建設業及び農林水産業です。今回のインターンシップ研修では、農業と観光をテーマとし、農場等への訪問を中心にスケジュールを組み、当地における農業と観光について学びました。
タスマニア州は良質な農産物及び畜産物で知られています。その質の高さは、肥沃な土壌と多雨によってもたらされています。同市は州内でも特に肥沃な土壌に恵まれており、畜産においては牧草での肥育が中心で、穀物はあまり使用されていません。雨に恵まれており牧草がよく育つという利点があるものの、夏季は水が不足することもあります。その反面、洪水による被害を度々受けているという課題があります。そのため、ミエンダー・バレー地域をカバーするミエンダー・ダムが州政府により設置されています。
同市では家族経営を行う小規模な個人事業主が多く、牛乳はタスマニア北部に工場を持つニュージーランド資本の大企業に販売しています。最近はラムの価格が以前の約10倍になっていることから、牧羊に乗り出す農家が増加しています。魚の養殖といえば海面養殖が一般的ですが、アトランティックサーモンの陸上養殖をしている事業主も存在します。重力を利用して川の水を生け簀に流し、生け簀から湿地帯に排水し水質を浄化するという環境負荷の少ない養殖を実践しています。同事業主はアクアポニックス(魚の養殖と水耕栽培を掛け合わせた新しい農業の形)にも取り組み、朝鮮人参及びワサビを栽培しています。オーストラリアでは二大スーパーが市場を寡占しているという状況もあり、各農家が取引しようとすると大幅な値下げを要求されることになります。そのため、農家はマーケットへの出店やオンライン販売など、直接消費者に販売する努力をしています。
農家の中には、観光にも取り組んでいる方もいて、上記のサーモン養殖事業主は観光客の訪問を受け入れています。観光客のうち約75パーセントはアジアを中心とする海外からの観光客とのことです。同市では土地利用に関しゾーニングを採用しており、農地を宅地など他の用途に変更することを規制しています。しかし、農家が観光客を誘客するために農地に宿泊施設を建設することを認めるなど、柔軟に対応しています。農場にカフェやレストランを併設して成功している例もあり、同市の観光業に寄与しています。
同市の職員と農場等を訪問した際、どの農家も市職員に熱心に今後の事業展開等について相談しており、官民協働で地域産業の振興に取り組んでいることを実感しました。また、タスマニア州北部の事業者等がビジネスを活性化させるために開催している月例のミーティングに出席する機会にも恵まれました。特別ゲストとしてタスマニア州政府財務大臣兼地方自治担当大臣が出席し会議をリードしており、州政府と事業者が緊密に連携して地域の課題に取り組んでいることに感銘を受けました。
研修期間中は、ミエンダー・バレー市から学ぶだけではなく、当職の派遣元である和歌山県の特産品や観光地パンフレットを持参して、和歌山及び日本の歴史や文化について紹介し、双方向の交流となるよう努めました。その結果、ミエンダー・バレー市の方々に和歌山県及び日本により関心を持っていただくことができ、パーキンス市長からシドニー事務所所長宛てに感謝状をいただきました。
今回の研修で得た知識や人的なネットワークを今後の業務に活かしてまいります。