11月28日から12月2日にかけて、ニュージーランド南島・インバーカーギル市にてインターンシップ研修を行いました。研修の目的は、住民サービス、観光政策、産業振興など幅広くニュージーランドの地方自治体業務を学ぶことであり、同市の職員の皆様と幅広く意見交換を行いました。
インバーカーギル市は、ニュージーランド南島の南端に位置し、人口5万2千人(NZ国内では13番目に多い)の都市で、産業はア ルミニウム精錬場などの工業、カキやブルーコッド(トラギスの一種)などの漁業です。スコットランドからの移民によって開拓が始まった街であり、いたるところに石造りの歴史的建造物(ヘリテイジビルディング)が残っており、魚貝類と並んで目当てに来る観光客も多いです。さらに、埼玉県熊谷市と姉妹都市であり、相互の中高生訪問や姉妹校交流も盛んに行っているため滞在中に日本に対する親近感を感じる機会も多かったです。
市内にあるSouthern Institute of Technology (SIT)は、ニュージーランド政府が設立した専門学校であり、生徒は約13,000人、そのうち留学生が約1,500人います。学習コースはビジネス、看護、ホスピタリティー、コンピューターなど約200コースがあり、さらに少人数クラスで学ぶ環境も採用しています。特徴としては、適用条件はありますが、Zero Fees Scheme(授業料無料)を採用し、ニュージーランド国内から学生を集めるほか、留学生に対しても専門コースに入学する前の英語講義に係る授業料にZero Fees Schemeを適用させているところにあります。導入した理由としてはインバーカーギル市がニュージーランド南島の南端に位置し、アクセスしにくい場所にあるので学生を集めるためのインセンティブとのことでした。また、学校近くに寮も完備しており、週100ドル(日本円7,800円程度)でワンルームアパートに住むこともできるため、街中からこの学校へ通う学生も多く、街自体が賑わっている印象を受けました。
歴史的建造物(ヘリテイジビルディング)については、街の中に多く見られ観光名所の一つにもなっており、保存されるのが望ましいと多くの市民も考えています。しかしながら、2016年5月にニュージーランドにおける建物法が改正され、国内の地震の危険度を3段階に分け、それぞれの段階応じた建物を補強修復する必要が生じるようになりました。その補強修復にかかる費用は建物の所有者が負担するため、歴史的建造物を建替えたい、費用の助成が欲しい所有者との調整が難航しているという話を伺いました。
家庭ごみの回収・リサイクルについてはニュージーランドの自治体の基本的な事務の一つです。家庭ごみは一般廃棄物とリサイクル可能なものの2種類に分け、各家庭から個別回収方式で一般廃棄物は週1回、リサイクル可能なものは月2回の回収頻度で行っています。一般廃棄物は、日本と異なり、焼却せず、埋め立て処理を行い、リサイクル可能なものは、リサイクル分別センターにおいて、分別され、資源として輸出または再利用されています。見学させていただいたリサイクル分別センターは、障害のある方の雇用を積極的に進めており、職員120名のうち、90名が障害をもたれている方とのことでした。また、不用品回収したものを販売するお店も見せていただいた。日本で言うとリサイクルショップですが、洋服や電化製品などの他にテレビのリモコン、自転車のかごなど部品単位での購入も可能なところに特徴があり、お店の方に伺ったところでは、部品が壊れたときにはまず、この店で該当する部品があるかどうか調べに来るお客が多いとのことでした。
アルミニウム精錬場については市内最大規模の産業です。豪州企業と住友化学の子会社であるニュージーランド・アルミニウム・スメルター(NZAS)が、市郊外の港近くでアルミニウム製品の生産を行っています。アルミニウムの生産には多大な電力が必要ですが、その電力は近隣の水力発電所から専用の送電線を使って賄っています。製品は飛行機にも利用されるほど高品質であり、製品のうち90%は輸出、その輸出のうち70%は日本向けとのことでした。